もしもの時に「海上保安部118番へ電話」当たり前のことですが、目前に巡視船がいつでもいるわけではありません。海保は24時間救助体制
にありますが、瞬間移動はできません。 ボートのキャプテンは、救助が必要にならない準備と「もしも」に備える必要があります。 |
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この日のYF23の釣行は、金華山東沖でしたが海域は北の風が強く波は時折3mを超えていました。水温も低いことから東の海域からトローリ
ングをしながら南下しました。徐々に波浪は小さくなりましたが大きな潮目のあるエリアでは、風波とうねりの他、複雑な波も発生してました。 |
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この日の海域予報では、「北の風が朝のうちやや強く午後には静かになり波は2mのち1mほど」しかし現場では3mを超える波が発生していま
した。これは、北の風に対して南からの潮流があるためと考えられます。こうしたことは、湾内でも起こります。干満の差が大きい大潮の際、風
向と潮流が反する時大きな波が発生し危険な波となります。ボートの免許取得の際に一般常識的なことを学びますが、実際に航海する海域
の特徴を知ることも大切です。 |
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<この日の安全対策>天候海況予報は、徐々に良くなる情報を得ていた。 釣行現場海域での状況判断は的確と思われる。3隻で行動し
連絡手段は、「マリンVHF無線機」と携帯電話による。もちろん全員救命胴衣を着用している。3隻(YF23・FG35・YF27)ともに事前の準備は、
万全であった。 関係法令書類、安全備品、船底の状態、船体の状態、整備工具、刃物、エンジンの点検、航海計器の機能、予備を含む燃
料、乗員の健康状態、ボート保険、食糧、飲み水、そして、荒天対策・・・船内の不用品陸揚げ・重心を上げず移動しない船内物の配置・ハッ
チ類の水密確保・船底のビルジ確認・排水口確認・デッキ上にわずかでも不用品を放置しない・落水に備え救命ブイ準備など。 |
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マリンVHF無線機は、ボートの安全確保のための通信手段として最も適しています。チャンネルにより海上保安部や巡視船と直接通話でき
る他、一般大型貨物船に対しても通話可能です。海上保安部の気象通報や漂流物通報、緊急通報を受信できます。ボートが日常使用できる
チャンネルでは、海域情報 (波や風、潮目、水温、魚影、鳥山、釣果、など)や有事の情報をボート間で交換し安全を確保しています。緊急時
の一斉通報ができることも大きな要素です。(遭難通信・落水者通報など) |
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画像は、3名合計210kgが左舷側に集中し220kgを超えるカジキを揚げようとしているところへ右舷側から波を受けて大きく傾いています。
YF23のこの傾きは、船底のV角度の分です。左舷側船底が海面に対し水平になっている状態で、実はまだまだ安全な角度と過重です。しか
し、23FTのフィッシングボートとしては驚異的な性能です。船体重心の海面からの高さ・船体の重量・浮力の中心位置・船底の角度と幅と形
状などによって性能は、大きく変化します。同じ23FTでもボートによっては転覆するほどの偏った過重であり更に波が悪い方に作用しています
この様な状態で船内にある重い荷物が、左舷側へ集中して移動した場合は、危険な状態に陥ります。 |
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<知っておくべき自船の性能>@ボートが浮沈構造かどうかは、浸水した場合に海底まで沈んでしまうのかどうか知っておくべきと思いま
す。法律の製造基準は明確ではない様ですが、製造メーカー単位での基準は、あります。YF23の場合はどんな状態にしても海面に浮いてい
ます。Aボートの定員は、検査機関で最終的な定員許可をもらいますがボートににより定員すべてが乗船した場合、極端に走行性能や静止
安定性がおちます。定員全て乗船した場合の性能低下を考慮し航海計画を立てるべきです。B走行性能の中で向い波でのパンチングや船
首からの波の打ちこみ、追波での減速による増速性能と操舵性能そして船尾からの波の打ちこみ、舷側に波を受けるときの傾きの許容角度
、波が打ちこんだ場合の排水性能とハッチ類の水密性及びハッチの開閉ロック機能も大切なことです。進水し転覆する原因は、デッキ上の海
水が排水される前に次の波が打ちこんだりハッチの水密が悪く船内に浸水した場合に極度に安定性が損なわれることです。C余裕のある航
続距離を知ることは、航海計画上大切です。エンジンの回転数による又は船速による燃費を知る、海況によるロスの度合を知る(波・風向・うね
り・潮流)ことなど常に知っておくべきことです。ディーゼル艇では燃料タンク残量があっても波浪によりエアーを吸いエンジンが停止することもあ
ります。 |
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<海況判断について>天気予報と海況予報により判断する場合、ボートの場合は風速が最も大切です。波が1m程度でも風が10mを超える
と危険です。また、風の強さは10秒間の平均ですから瞬間的には倍の風も想定されます。風が弱くうねりが高い場合の海況での注意として
潮流とうねりが逆の場合大きな波とります。水深の浅い海域や磯付近でも大きな波となることとうねりは一定の高さではなく徐々に大きくなっ
たり10分に一回とか20分に一回という周期で倍以上の大きなうねりとなるのが太平洋側の特徴です。防波堤で人がさらわれるのはこの波に
よることが殆どです。ボートの船長は自分の経験知が最も優先する思考回路となりがちですが、様々な情報収集による想定をし、判断ミスをし
ないことが前提で、もしもに備え万が一の際は恐怖におののくのではなく最善の対策と行動をとれるよう常に万全の準備が大切です。 |
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全国、平成20年の船舶海難発生状況は、2,384隻、そのうちプレジャーボート海難が891隻で最も多くなっています。 |
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東北(第二管区内) 平成20年の船舶海難は、146隻、そのうち29隻がプレジャーボート海難でした。 |
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上記ボート海難種類別では、衝突7隻・機関故障6隻・転覆3隻が上位で原因は、「不適切な操船」、「整備不良」、「見張り不十分」、「気象・海
象不注意」であり操船者自らの人的要因によるものです。 |
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<救助について>海上保安部へ有事の場合(海難事故を起こした場合、見た場合など)通報する義務があります。自分が救助を求める場合
に大切なことの一つに自船の正確な位置があります。常に自船が緯度経度で何所にいるのか把握しておくことが普段から大切です。ボートを
購入する場合や保管する場合、又は航海する範囲などを考え有事の場合に救助を呼ぶことが可能かどうか、その救助体制がどうかを確認し
ておくことが大切です。同時に遼船や他船との通信手段の確保も大切です。 |
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ボートの購入店に救助体制があるか、保管場所(マリーナ)に救助体制があるか、仲間がいるかどうかも大切です。 |
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マリーナやボート販売店により「レスキュー体制」という概念がないところも多数あります。関東では民間の救助機関「BAN」がありますが東北
地区にはありません。ボートの購入先と保管場所選びは、ボートの安全性の次に大切なことが、「レスキュー体制」といえます。 |
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